第十九夜 「ふみえ食堂」カウンター初公開！とあるスタジオ。写真担当店員、美術担当店員、文章担当店員が、ふみえを囲んでカウンターの前に集合。この日、ふみえは注文があれば、包丁１本さらしに巻いて、何処なりと出張することを決心したのであった。
第十九夜 「ふみえ食堂」にようこそ！テーブルに料理が並び始めた。れんこんのアンチョビソテー、ミニトマトの塩だし浸し、酒飲みのポテトサラダ、ローストポーク……。次々と客が到着し始める。40人以上の客を迎えてパーティーは大盛況だ。
第十九夜 写真も展示写真担当店員が写真を展示して、照明の具合を調整している。あの日あの時のあの料理。どれも「ふみえ食堂」の人気料理だから、今宵集う「ふみえ食堂」ファンの客同士の話の糸口になってくれるにちがいない。
第十九夜 お土産『ふみえ食堂』美術担当店員が、刷り上がったばかりの『ふみえ食堂』に今日のメニューをはさみ込んでいる。「ふみえ食堂」の料理のうち“いいね！”ベスト10のレシピを掲載した冊子で、今日の客へのお土産にするらしい。
第十九夜 こしらえ中いい匂いがしているキッチンでは、助っ人がふたり駆けつけて、笑い声が弾けている。ベーコンとクレソンのごはんは炊き上がり、揚げなすがだしに浸っている。タコ糸をかけた豚肉は、後はオーブンに入れるばかりだ。
第十九夜 パーティー会場設営都内某所にふみえ食堂の看板がかかった。会場の中ではなにやらパーティーの準備をしているようだ。美術担当店員が壁にふみえ食堂の由来と本日のメニューを張り出している。なになに……なるほど。
第十八夜 四皿目 ハラミ丼肉汁の落ち着いたころを見計らって、ふみえはハラミステーキを切って温かいごはんにのせる。「やっぱり肉はおいしい」。同級生は、おなかいっぱいだ、食べ過ぎだと言いながら、ステーキをほおばり、たれの染みたごはんを口に運ぶ。
第十八夜 三皿目 湯豆腐「湯豆腐。このシーズン初鍋だわ」。「鱈も入れる？」。「もちろん」。豆腐だけの湯豆腐は潔いけれど、冷え込む日には、脂がのった鱈のやさしい味わいがうれしいものだ。すっかりカラダの芯まで温まった彼女の頬はほんのり桃色だ。
第十八夜 二皿目ふろふき大根の鶏皮みそ添え黒板を見ている同級生に「滋養たっぷりのふろふき大根、どう？」。熱々の大根を盛り、鶏皮と昆布のうまみが溶けた煮汁をたっぷり注ぎ、鶏皮みそと柚子を添える。箸をつける前に汁を吸い、「おいしいね」。
第十八夜 一皿目ごぼうのコンフィと砂肝のコンフィ日が暮れると足元がひんやりする。客のいない店はなんとも寒々しいと思ったその時、同級生が入ってきた。「寒っ。温かいものがほしい」。ふみえはワイン好きの彼女のためにコンフィを温め始める。
第十七夜 五皿目 かぶの浅漬け 天茶の合間にひんやりとしたかぶの浅漬けを食べながら男は、ここは知った人に会う心配がないから女の言うままに通ったけど、こういう料理があるなら悪くないなと思っている。隣で天茶を食べている女は、男の心中などとっくにお見通しなのだ。
第十七夜 四皿目 かき揚げの天茶えびが揚がるいい匂いがしている。ふみえが少し緊張をした顔で揚げているのは、かき揚げだ。ごはんにえびのかき揚げをのせ、昆布水でいれた煎茶をかけ、おろしたてのわさびを添える。男は、かき揚げを少しくずし、音を立ててかきこむ。
第十七夜 三皿目 ねぎ豚今宵は男の昇進祝いらしい。男は脂身をうまそうに食べている。おからを入れて下ゆでしたバラ肉はしつこさがなく、男の口にことのほか合うようだ。そのおからを炊きあげたのが、さっきの卯の花。ねぎ豚と卯の花のコンビは、ふみえの十八番なのだ。
第十七夜 二皿目 せいろ蒸し野菜湯気の上がっているせいろ蒸しにマヨネーズベースのソースを添えて出すと、男はふみえの顔を見て「ポン酢じょうゆを……いや、しょうゆでも」。ふみえは、心得ていますとばかりにポン酢じょうゆを出す。女とふみえが目を合わせて笑い出す。
第十七夜 一皿目 卯の花女がやわらかいまなざしで卯の花を食べている男を見て、小さく笑う。いつもはてきぱき注文するのに、「お祝いだから、あなたが選んでいいわよ」と言った結果の卯の花なのだ。ふみえ自慢のしっとり仕上げた卯の花は、じつはあるものを作った副産物だ。
第十六夜 五皿目 クラシックプリン「えーっとプリン」。予想外だったので、ふみえはちょっと驚いたけれど素知らぬ顔で「生クリームどうします？」。「なしで」と青年。プリンを皿にあけると、甘いカラメルソースがプリンの裾野に流れる。ふみえと青年の目が合って思わず笑みがこぼれた。
第十六夜 四皿目ハムステーキ＆パイナップルハムが焼ける特有の匂いに続いてパイナップルの甘酸っぱい匂いが立ちのぼる。今まさにハムとパイナップルの二重奏が始まった熱々のスキレットを、青年の前に置く。待ちかねたように、厚いハムにナイフを入れる。
第十六夜 三皿目 〆さばのトーストサンド青年は黒板とふみえを交互に見ながら「〆さばサンド、あるんですね」。「はい、今日いちばんのおすすめです」。ふみえは、これこそ青年に食べてほしかったのだ。いそいそとパンを焼き、わさびとディルを加えたマヨネーズとを塗り始める。
第十六夜 二皿目 丸ごとじゃがいも＆アンチョビマヨネーズ蒸し器がさかんに湯気を上げている。ふみえは、ふたを開けて竹串を刺してうなずくと、ホクホクのじゃがいもを取り出す。カウンターでは青年が期待に満ちた笑顔で見ている。アンチョビマヨをのせて「熱いですよ」。
